嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「父さんと母さんにはこれ以上ない愛情を注いでもらったよ。だから反抗期もなかったし、グレたりしなかった」

 さっきの父親の言葉に繋がるように、俺の性格は昔からほぼ変わっていない。ずっと聞きわけのいい子供だったように思う。

「周りと同じように、あたり前に愛情を受け取っているはずなのに、それにも関わらず愛情の持ち方とか、伝え方だとか、そういうのが人とズレている」

「そう思い込んでいるだけじゃなくて? 母さんは、仁は愛情を持っている子と思っているけど。現に花帆ちゃんが大好きじゃない」

 大好きだと断言されて苦笑する。ポーカーフェイスを貫いているつもりでも両親には分かるみたいだ。

「花帆は好きだよ。でも、花帆との間に子供が産まれて、温かい家庭を築けるのか自信がない」

「そんなの今から悩むなんて早すぎよ」

「そうだぞ。子供が産まれて、初めてそこで父親としての自覚が生まれるんだから」

「ふたりの言いたいこと、頭では分かっているんだけどいまいちピンとこないんだ。よく言うだろう。虐待をされた子供は繰り返すって」

 胸の内を吐露すると、ふたりはハッとしたように目を見開いた後、じわじわと悲しみの色を浮かべた。

 ふたりを呼び出した一番の目的はこれだ。

 結婚しなくていいと考えていたのは、普通とは違う感覚を持った俺が子供を育てるのが怖かったから。育てる自信なんてなかった。
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