嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 
『工房は女性の従業員は少ないし、やっかみもないだろうから早めに報告するべき』という、私よりもずっと大人びてしっかり者の萌の助言に心を動かされてついに決意を固めた。

 翌朝ミーティングの際に仁くんから報告があると、驚きを露わにした人が大多数だったが、なかには「やっぱり」という反応を見せる人間も少数いた。

 おめでとう、と周りから祝福を受けて、照れ臭くなると同時に、本当に仁くんと結婚するのだという実感が湧いた。

 仕事がやりづらくなったら嫌だな、と懸念していた部分に関しては、教育係である阿久津さんが遠慮なく私をしごくので問題ないらしい。

 結婚式まであと二か月。時間がないなかでの準備に関しては、仁くんが全面協力すると言っているし、弥生さんも手伝ってくれるというのでそこまで不安を感じていない。

 気掛かりなのはただひとつ。

「次の休みに会いにいこうと思っているんだけど、花帆の予定は?」

 ベッドのなかで私を後ろから抱きしめながら仁くんが尋ねた。

 仁くんは私の首筋に顔を埋めるのが好きらしく、うなじや耳のすぐそばに自身の鼻を擦り付けてくるから、心臓がいくつあっても足りない。
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