嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「空いているけど、沙倉さんって今どこにいるの?」

「じいさんとばあさんと、長野の別荘地で一緒に暮らしている」

「そうなの!?」

 だとすれば、仁くんの祖父母にもご挨拶をしなければならない。

 数回会ってはいるけれど、私がかなり小さい頃なので記憶がおぼろげだ。彼らも私を覚えていないかもしれない。

「父さんと母さんも行くって言ってきかないんだけど、大丈夫か?」

「まさに家族旅行だね。杏ちゃんは?」

「杏太も行くそうだ」

 杏ちゃんが一緒というだけで不安が和らぐ。ずっと兄妹みたいな感覚でいたけれど、もうすぐ本当の兄妹になる。なんだか不思議な気分だ。

「緊張するなぁ」

「それは俺もだ。あの人が一緒に暮らしているから、じいさんたちに会うのも数年振りになるし」

「沙倉さんとは本当に一度も?」

「会っていない。今でこそじいさんたちと暮らしているが、数年前まではひどい鬱病で精神科病棟に入院していたんだ。母さんでさえなかなか会えない状況だった」

「完治はしたの?」

「昔と変わらないくらい元気になったそうだ。でも、病気になる前と同じくらい回復しても、顔を合わすどころか、連絡さえも取り合っていない」
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