嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
 どんな答えをもらっても受け止める覚悟を決めたはずなのに、実際身をもって体験するとそんな簡単じゃないと痛感する。

「でも強制じゃないから、誰とも結婚しないという方法もあるよね」

 心が荒れてやけくそになった。

 だったら取りやめるって言われたらどうしようと、口にしてから激しく後悔する。

「まあそうだな。でも、これでも跡継ぎだから。結婚して子供がいた方がみんな安心する」

 子供、と口のなかで小さくつぶやく。

 完全に打ちのめされた。

 そんな理由で結婚を決めた仁くんの思考を理解しきれない。

「花帆は子供好きじゃない?」

「好きだけど……」

 それならよかった、とうなずく顔を見ていられない。

 まだ式を挙げる場所も日取りも具体的に決まっていないし、私は名ばかりの婚約者だ。でもゆくゆくは男女の関係を持とうとしているんだよね?
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