嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「海外挙式もいいわよね」

「そうね。海外といったらハワイやグアムが定番だけど、イギリスの結婚式ってどういう感じなのかしら」

 お喋り好きの母親たちの会話はどんどん進んでいく。

「お母さん、さすがにイギリスは行かないよ」

 釘を刺すと、「そりゃそうよねぇ」と苦笑いをこぼした。

 この春、父親の転勤に伴い両親はイギリスに移住する予定になっている。期間は不明で、どんなに短くても二年は日本に戻ってこられないとか。

 そこで浮上したのが私の見合い話だった。

 ただでさえ重労働を強いられる朝霧菓匠に就職するのに、炊事洗濯など家事がほとんどできない私がひとりでやっていけるわけがないと、今度は母親に止められたのだ。

 たしかに今まで母親に頼りきりでお菓子しかまともに作れないけれど、そんな理由で将来の夢を諦められるわけがなく。

 必死に説得した結果、どういうわけか仁くんか杏ちゃんどちらかと婚約関係を結び、朝霧家に入ってお世話になるという道筋ができあがっていたのだ。
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