嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「それで? 般若みたいな顔をしていた理由はまた仁なの?」

「般若って酷くない?」

「今度から外で考えごとする時は鏡を見ながらにした方がいいと思うよ」

「……私の話は後でいいよ。お察しの通り仁くんが原因だし。今日は杏ちゃんの話をするんでしょ? 相談ってなに?」

 私が本当に般若の顔をしていたのか分からないけれど、杏ちゃんの顔もそれなりに険しい。

「彼女と別れた」

「え!?」

「二股かけられていた」

「ひどっ!?」

「一応俺が本命だったらしいけど」

「えー……」

 杏ちゃんの彼女には会ったことがないけれど、写真を見る限りかなり可愛くてアイドルみたいな子だった。

「許してほしいって泣きつかれたんだけど、どう思う?」

「どう思うと言われましても……」

「仁に二股されたら許す?」

「仁くんがそんな不誠実な真似をするとは思えないから、もしもの話でも想像できない」

 真面目に答えると、杏ちゃんは「はいはい、そうですかー」と投げやりに言葉を放った。

 だって本当にそう思うんだもん。
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