嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「幼馴染だしやっぱり仲がいいんだね」

「そうですね。歳も近いし、兄妹のような感じです」

「あれ? じゃあ朝霧さんとは?」

「それなりに……でも、歳が離れていますから」

 職場では仁くんとほとんど会話をしていない。プライベートでは花帆、仁くん、と呼び合っているのもみんなは知らないはずだ。

 私たちが婚約関係にあるなんて誰も想像すらしないだろうから、それはそれで助かってはいるのだけれど、少し寂しい部分もある。

 あのかっこよくて素敵な人が未来の旦那さまなのだと自慢したくなる。

「いいなぁ。俺も朝霧さんと幼馴染だったらどれほどよかったか」

 恋する乙女のようなうっとりした目を仁くんに送っているのを見て、私も阿久津さんのように素直な性格だったら苦労しなかったのかなぁと思う。
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