きっと、月が綺麗な夜に。
大好きな食事も忘れ、美矢と僕と優は楽曲制作に打ち込み、納得の行くものが出来た頃にはもう良い時間の夜を迎えていた。


「うん、良いんじゃない?あんまり時間かけても逆に微妙になることもあるし、これで進めよう」


優からの「よし」が出た途端、緊張の糸が解れた美矢は、へにゃへにゃ、とプレハブ小屋の床にへばって、たまにクロミがうちの床でやるような、毛皮のじゅうたんみたいなポーズになってしまった。


「明日はレコーディングだから、それまでに仮音はこっちで打ち込みで作っとくよ。明日ギターの音取りから始めるつもりだけど、猫ちゃんエレキは出来るの?」

「大丈夫、ひと通り色々遊べるくらいは弾ける」

「へえ、ますます面白い子だね。良く今までこの才能が埋もれてたもんだ。世界って広いわ」


天才が新しい才能を見つけて楽しそうに笑っている。この2人、なんだか気が合いそうな予感しかしない。

優はスタンドに立っているエレアコを1つ手に取ると、まだ毛皮じゅうたんの美矢の前にしゃがみ込む。


「協力した見返りは、MVアップする時にボクのクレジット掲載してくれることと、ボクが満足するまで弾き語りしてくれることで良いかな?」

「そんなん、いくらでも。その前に、ご飯」


すっかり身も心もぺったんこの美矢に、優は目を丸くしてまた楽しそうに笑った。
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