きっと、月が綺麗な夜に。
それはとりあえず、りょーちゃんと話し合ってからにしておいて、今日はまず美矢の為のスマホを買うところから始めなければ。


なんて思いつつ、僕は仕事用に持っているサブのガラケーを美矢に手渡す。


「これ、僕の仕事用の電話機だから。僕の名前以外の電話来ても出ないでね。何かあったらかけて。使い方は分かるよね?」


「大丈夫、一応。ガラケーなんかじいちゃんのしか触ったことなかったけど、多分、電話くらいなら」


流石最近まで女子高生だった子だ。ガラケーなんてその名の通り彼女にとってはガラパゴス化した産物なのだろう。僕ですら、島に戻って教師しだしてから握ったくらいだし。


「お金は?大丈夫?」


「へーき。多分、とらが引くくらいは持ってるから」


なんだか、やはり美矢は訳ありなのかもしれない。この3日間があまりにも穏やかだったから深く考え無さすぎたけど、高校卒業して就職も進学もせず放浪して、連絡先も家族もない少女なんて、どう考えたって普通じゃない。


じゃ、と手をひらひら踊らせセレクトショップの中へ消えていく美矢の背中をしばらく眺めた僕は、少し困り、まだまだ暑さの厳しいせいで首に伝った汗を肩で拭った。
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