一匹狼くん、 拾いました。弐
「はぁ……一人っ子が良かったな。なんでぽっと出の妹になにもかも」

 校門を見ながら仁は呟く。

 え、それって。

「急に来た?」

「そ。康弘さん、俺が三歳になる前に母さんと付き合って、鈴音が十三歳になる時に結婚、同居」

 交際長すぎだろ。

「なんでそんなに」

「離婚してすぐ結婚は、噂立つだろ」

 仁のためじゃないのか。

「嫌だな、そういうの」

「あぁ。料理教室なんて炎上しそうじゃん、男たらしだと」

 確かに。でもそんなの、子供にはわかんねぇし。

「勝手だな」

「寂しかったよ。なのに親はデート三昧、ずっと金稼いでると思ってた」

 最悪すぎる。

「地獄に落ちればいいのに」

「本当にな。はぁ……鈴音、現実知れば来なくなるかな」

 階段を降りながら、仁は呟く。何も知らないままじゃなくなれば、心変わりする。絶対じゃないけど。

 
「鈴音、帰るぞ」

 仁は妹の腕を掴む。

「え、うん! いいの?」

「結賀と俊も一緒なら」

 結賀と目を合わせてから、仁を追う。病院は今度でいい。

☆☆

 電車に揺られて、渋谷の住宅街に辿り着く。白や茶色の様々な家々の中で、ひときわ目を惹く、四階建てのところ。一階は料理教室で、二十人以上は入れる広さ。ガラスドアが特徴的だ。

 息を吐いてから、仁はガラスドアをくぐる。

「鈴音! お帰りなさい」

 仁の妹を女の人は抱きしめる。隣にいる仁には、見向きもしないで。

 吊り上がった瞳、料理の先生なのに、長くてネイルがあしらわれた爪。真っ赤な口紅。甘ったるい、チョコレートの香り。

 なまめかしすぎて気持ち悪い。

「ママ……おにい、帰ってきたよ」

 仁の母親が俺と結賀を見る。
 
「まぁ、鈴音のお友達?」

 は?

 なんて言った?

「俺達は仁の友達ですけど」

 結賀は仁の母親を睨む。

「え、ごめんなさい。気がつかなかったわ」

 やっと母親は仁を見る。

「はっ、ようクソババア。ずいぶんバカさに拍車がかかったな」

 呆れも悲しみもない。冷静な声で仁は告げる。

 最悪だ。こんな地獄、連れてくるべきじゃない。


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