一匹狼くん、 拾いました。弐
「相変わらずね、その言い方」

 覚めた目をして、母親は言う。妹への態度と違いすぎる。

「てめぇは相変わらず、目が腐ってんな」
 
 わざと仁は口調をまねる。

「何のよう?」

「何の? 息子が家に帰ってくるのに、理由がいるのか」

 わざと挑発している。

「必要でしょう、あんたは望んで一人暮らしをしてるんだから」

「アハハハハ。再婚した途端、俺を無視したくせによく」

 仁が笑っている。でも、それが逆に恐ろしい。

 なぁ仁、その笑顔、嘘じゃないのか? なんで泣かないんだよ、こんなことされて。

「当然じゃない。あんたは異物なんだから」

「産み落とした奴がよく……はぁ」

 部屋にならんでいる何十個のテーブルを見てから、仁はその前にあるキッチンカウンターへ行く。そこにあるケーキを足で蹴った。

 生クリームといちごが床に、壁に飛ぶ。

「きゃあぁぁ! 今日の授業のために作ったのに」


 仁の母親は声を上げて口を手で覆う。そうしたいのは仁だろ。見ていられない。

「授業? やたら着飾って、合コン気取りか」

 クリームのついた靴下を脱いでゴミ箱に投げ捨ててから、仁は階段の方に行く。

 追うのが怖い。俺は、仁の何もかもを知っているわけじゃない。だからこそ、向き合わないといけない。でもこんな環境なんて、誰が予想した?

 こんな無駄に広い家で、仁はずっとあんな……。

 ガタ。

 不吉な音がする。振り向いてみると、結賀は膝から崩れ落ちていた。


「なぁミカ……俺達は、悪魔に食われたのか」

 そんなの俺が聞きてぇよ。


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