小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…


家に着くと、愛しい妻は玄関先で鞄を床に置き、カーディガンを脱ぎ、僕を誘惑する。


「郁人くん………んー」


両手を広げて抱きしめてとせがむ姿に簡単に心臓は煩く鳴り響いた。


「……部屋まで我慢できないぃ…」

「……何処でそんな可愛いおねだり覚えたの…?」


優しさの仮面が容易に外れそう。


「……好き放題して良いんでしょ? ワガママが許される日なのに…」

「はいはい…」

「嫌そうにしないで…」

「………してないよ。照れてんの…」


ギュッと抱きしめると、ふわりと匂う詩乃ちゃんの香り。
必要以上に今まで触れなかったのは歯止めが効かなくなるのが怖かったから。

久々に嗅いだその香りは、僕の欲を掻き立てる。


「……詩乃ちゃん…」

「なに?」

「…………重版、おめでとう。」


今日、一番伝えたかった言葉を紡ぐと、彼女の反応を見ずに僕は唇を重ねた。


「ん…」


詩乃ちゃんの好きな甘いお酒の味が微かに残っていて、その味を堪能するかのように口内を蹂躪する。


(これ…やばいかも…)


グッと苦しくなった。血液が下半身の中心に集まって、ムクっと勃つのを感じたところで僕もかなり酔っていたということを思い知る。

深呼吸をして平常心を取り戻そうと試みたけど、詩乃ちゃんのご満悦そうに部屋へと進む姿を見ると、何もかもどうでも良くなってきた。

そもそもなんで回りくどいことしてるんだろう。

思うままに毎晩抱けば良いのに。


《ガチャッ》


ドアが開く音も気にならないくらいに、僕の頭の中は詩乃ちゃんでいっぱいだった。


「郁人くん…。ベッドに横になって…?」

「うん。」


言われるがまま移動して、詩乃ちゃんは僕の隣でゴロリと横たわる。
気持ち良さそうに大きな伸びをすると、にんまりと笑った。


「郁人くんのベッド、郁人くんの匂いがして落ちつく〜」


スゥッと吸い込まれると、なんか恥ずかしい。


「……ほら、好きにするんでしょ…? なにしたいの…?」


理性を保つのに限界を感じた僕は、早く触れたくてそんな質問を投げかけた。


「えっとね……キスしたい」

「…詩乃ちゃんが? それとも僕がすれば良いの?」

「私からする…!」


詩乃ちゃんは起き上がると、僕の枕元に手を置いて徐々に顔を近づけてくる。


重ねるだけのキス。


詩乃ちゃんの唇の弾力とか、柔らかさとか…。


胸がくすぐったいキスの仕方にタガが外れそうになる。


「ん…」

「詩乃ちゃん…。」

「郁人くんは何もしちゃダメ。」


それは拷問なんだけど。
ゆっくりキスしながら満足そうに微笑んでる。今すぐ押し倒して最後まで致したくなった。


「郁人くん。」

「ん…?」

「下、ぬぎぬぎして…」


えぇ…と?

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