あの丘でもう一度。
朱音と茜
真っ赤な夕焼け空。小さな公園の小さな丘でめいいっぱい空に手を伸ばす1人の青年。

「翔、こっち帰ってきてから毎日手伸ばしてんの?」呆れたように問いかけたのは、西村友哉、彼の友達だ。

大学生になり、朱音そっくりな女の子茜に出会ってから早1ヶ月が過ぎようとしていた。翔は毎日学校が終わるとこの丘に来て手を伸ばす。それを日課としていた。

今日は友哉にご飯を誘われ仕方なくこの丘に連れてきていた。

「うん、夕焼けが見える日は毎日。もうちょっとしたらあの子も来るよ。」「え?」

友哉は翔の言葉の意図が分からず戸惑う。あの子ってまさか、そう思った時だった。

「翔くん!やっほー!」元気よく丘へとかけ登ってきたのは、やはりあの少女。嘘だろ、翔は朱音と重ねてみてるんじゃないか、そのうちこの子自身を朱音と思い込まないだろうか、色んな考えが頭を巡る。

「友哉、おい友哉。」翔の声に考えも何もかも捨てて現実に呼び戻された。

「この子、覚えてる?黒坂茜ちゃん。」
「入学式の時迷子になってた子だよね?」
「そう。あの日さこの丘に来たら茜ちゃんが居てさ、心臓とまるかと思ったよ。」

翔はそう言うと切なそうに笑った。茜は何を考えるでもなくただただふたりと同じように寝転び空を眺めていた。
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