イケメン従者とおぶた姫。
ドックン、ドックン……!!


今まで、経験した事のない甘酸っぱくあま〜い甘〜い緊張感に耐えられなくなった
ショウは


「…さ、サクラッ!!」


思わず、大きな声でサクラの名前を呼んでしまった。しかも、緊張のせいで声もひっくり返っちゃって…恥ずかしい。

その声に驚いたサクラも


「…は、はいっ!」


反射的に返事をし、続きの言葉を言えなくなってしまっていた。

それをいいことに、ショウは
どうも慣れないあの甘酸っぱい雰囲気から逃げ出す為、無理矢理に話題を変えた。


そうそう!ずっと、気になってた事があったんだ。


「サクラって、細いのに筋肉スゴイよね!
前から気になってたの。…触ってもいい?」


ショウが、そうお願いしてサクラを見ると

サクラの顔が見る見る赤くなっていき


「…わ、私の体でよろしければ、いくらでも…!」


そう言って、恥ずかしそうに目線を逸らし
少し俯き加減になっていた。


…きゅん!


あ、あれぇ?

サクラが、妙に可愛く見える…

おかしいな。サクラが美人ってのは分かってるけど…かわいいとか…


ドキドキ…!


さっきの雰囲気に耐えられなくて、ああは言ってみたんだけど…

なんか、これはこれで…


…ど、どうしよう…


ドキドキ…!


いや、でもああ言ってしまったからには…
だよね?やんなきゃ、それこそおかしいもんね?

こ…こんなはずじゃなかったのに…

私の想像じゃ、もっとフレンドリーに
キャッキャ!笑い合って…なんか、想像してたのと全然違う…


ショウの想像するものとは、かけ離れた
雰囲気に飲み込まれながらも

ショウは、一番気になっていたサクラの腰を掴んでみた。

ほ…細い!薄っぺらいぞ、この腰っ!
それに、こんなにマジマジと見た事なかったけど、腰がキュッて引き締まってる!

見た目もそうだけど、実際に触るとその細さが分かる。


…な、なんてこった!

お腹が、六つに割れてる!!


…さわさわ…


「……ッッ!!?」


あれぇ?サクラって腰に比べて肩部分の背中が少し厚みがある気がする。


…さわさわ…


「……くぅっ!」


サクラの肩も凄い!しっかりしてるんだなぁ。

太ももも、ふくらはぎも細いのにみっちり筋肉がついてる。


…さわさわ…


「…ハア…ハア…んっ!」


サクラの見事に美しい体に、ショウは
夢中になって触っていたが


…さっきから、何だろ?

サクラの息遣いが変な気がする。


存分に、サクラの肉体美を観察したところで
サクラの異変に気づき始めた。

だって、さっきまでプランと下を向いていたサクラのサクラくんが気がつけば、
おっきして上を向き反り返っていたから。

でも、サクラと一緒にお風呂に入ったり眠ったりしているショウは知っている。

これは、男の“セイリゲンショウ”なのだと。

男のそれは、尿意をもよおしたい時、疲れた時など、エッチな気持ちになる他にもおっきしてしまう面倒なものらしい。

男の人は、大変だなぁと思う。

サクラがおっきしているのは、毎日のように見ていたし幼い頃にそう説明もされているので今までは、さほど気にした事はなかった。
ただ、漠然と大変だなぁって思うだけで。


でも、どうしてだろう?

サクラと離れて、サクラの事をたくさん考えるようになった今…すごく緊張してしまう。

とっても、エッチな事のように思ってしまう。

…見慣れているはずなのに。

こんなに、マジマジと見る事がなかったせいだろうか?


…ドッキドッキ…!


な、なんでかな?

…すごく胸が切ない…


ショウは、どうしてだか
それは見てはいけないもののような気がして、サクラの腰へと無理矢理に目線をずらし

気まずさから、サクラの腰をまた触った。



すると…


「…あっ…あぁっ…!」


な、なに?何か、聞いちゃいけないような声がする気がする!

息遣いもだんだん激しくなってきてるし。

しかも、触る度にサクラの体がピクピク動いてる。くすぐったいのかな?


…ドキドキ…!


なんだろう…さっきから私…変な気持ちになってる。本当に、どうしちゃったんだろ…?
今まで、こんな事なかったのに。


そう思い、サクラの顔を見ると


…ドッキーーーーン!


「……へ?」


サクラは両手で自分の顔を隠し、何かに堪えるよう歯を食いしばっている。
声を漏らさないよう息遣いも抑えようと必死に耐えて我慢してるように見える。

けれど、我慢しきれなかった声と息遣いが
たまに漏れ出す。

…なんだか、とってもとってもエッチに思える。

その隙間から見えるサクラの表情は、トロリととろけるような…甘い…妖艶な表情をしていた。

顔も首も背中まで赤く染まった色が、更に
サクラのエロスを引き立てる。


サクラのあまりの色っぽさにビックリして、サクラの腰に触れていた手をどけようと慌てて手を離そうとした時

サクラの腰をスルリとかすってしまうと


「……ショウ…様っ!…んっ…!」


と、サクラは体をフルフル震わせながら
何とも甘美な声を漏らした。何が起こったのか、サクラの体は少しばかりくの字に曲がった。

何事が起きたんだと、ただただ驚き
ボケーっとサクラを見ていたショウを
トロンととろんだ目でサクラは見てきて

ショウの体をギュウゥゥッと切なそうに
抱き締め


「…夢なんだから、これくらいは許されるよな。」


そう呟き


…ちゅうぅぅ…


サクラは、ショウの唇にキスをしてきた。



……え?



いきなり、サクラにキスをされショウは頭が
真っ白になった。

今までサクラのキスは当たり前で
数えきれないほど、たくさんたくさんキスされてきた。

けれど、それはオデコだったりホッペ、手とかで…唇にされた事なんてなかった。

だって、サクラは言っていた。
唇へのキスは特別なのだと。唇は“恋”という特別な好きじゃないとしないと。お互いを確かめ合ってするものだと。


なのに…あれ?

今、私…サクラとお口にチュウしちゃってる?


ショウの唇に、フニフニ柔らかく温かい…
サクラの薄い唇が重なっている。

それから、サクラは少しだけショウの下唇を唇で挟みハムハム動かしていた。


…なんか、サクラに食べられちゃいそう。


なんて感じながら、唇を合わせるってこんなに気持ちいいんだ…と、サクラを感じ
うっとり自然と目をつむってしまっていた。

サクラのキスは、更にショウの唇にちゅうぅと吸いついて…たまにペロリと舐められ…

ショウは、なんだかくすぐったいような
歯がゆいような…でも嫌じゃない…もっともっと、たくさんしてほしいような不思議な感覚に襲われていた。


ドキドキドキドキ…


心臓の音はうるさいし、体が熱くなっていくし…ん??気がつくと、自分もハアハア息が荒くなってる…え?え?私…どうしちゃったの?

ショウは、今までもこんな気持ちになった事があったのを思い出す。

けど、それはここまで強く感じた事がなかったから怖いなんて思わなかった。

だって…この感覚…

サクラが深く濃厚に進めていくうちにドンドン強くなっていくし、今まで経験した事のない感覚も出てきている。
これから、サクラがどんな風に触れてくるのかも全然分からない。

もう、色々と未知過ぎて怖く感じちゃう。

自分が自分でいられなくなりそうで怖い。


こんな、感覚…知らない…

怖い…怖いよ、サクラ、サクラ、助けて…


サクラによって引き起こされた感覚だというのに、ショウはサクラに助けを認め

サクラにギュウっとしがみついた。

すると、サクラはショウの背中を弄り始め
ショウの唇の間に舌を割り込ませてきた。


…えっ!!?

な…なに???


と、ショウが驚くのもつかの間。

スゥ…と、サクラの体が少しづつ消えていくのを感じた。



「…さ、サクラ!?」


驚き、サクラを見ると

サクラも驚いた顔をしていて


「…ショウ様…!」


どうにか、ここに止まろうと力んでいる様子で…でも、もう集中力が切れてしまったのだろう。

サクラの体は徐々に透けていき、触れる事ができなくなっていった。

それに焦ったサクラは


「…こんな…!せっかく…」


と、悔しそうな表情を浮かべ、寂しそうに
ショウを見つめると

ショウの頬に触れようとして

…スゥ…

サクラの手は、ショウの顔をすり抜け触れる事ができなかった。

サクラは今にも泣き出しそうに美しい顔を
グシャリと崩すが、グッとそれに耐え

ショウの目をしっかり見て、ショウに言葉を掛けてきた。



「もう、時間が残されてないようです。
これだけは、伝えないと。
…この建物のどこかに、悪い存在が潜んでいます。…どうか、どうか気をつけて……。

あと……」


と、最後何かを言いかけ消えてしまった。


ドッキンドッキン…!


「……夢……?」


夢にしては、抱き締められた温かい感覚や…唇にされたキスの感覚が生々しく残っている。

しかし、こんな事現実にはあり得ない話で…


ショウは、今起こった事に頭がついていかず

ただただ、ボー…っとしていた。


ボーッとしながら、まだ、得体の知れぬドキドキと戦っていた。


なんで、こんなにドキドキしてるの?

な…なんか、サクラの事考えると…胸がギュッて苦しくなる…

キュンって…切なくなる…

なんか、変だ…私…

本当に、変…


なんか、この感じ…

演劇とか映画でよく主人公とかが体験する
アレに似てるなぁ。


主人公達がよくする恋みたいな。


…そう、恋みたい…な?


…んんっ!!?


あ、あれれぇ〜〜!??



ドッキンドッキン!



う…ウソ…

私が、サクラに恋??


た、確かに、サクラは人間じゃないかもって思うくらいものすっごい美人だけど。

優しいし包容力もすごくあって…何するにしてもカッコいいし…。

でも、それはサクラだから当たり前の事で…。


ドキドキドキ…


サクラと離れるまで、こんなに深くサクラの事考える事なかったのに。


……私が、コイ……


う〜ん


そっかぁ…


なんか、恋って思ったらしっくりしちゃう。


多分、サクラと離れる事なくサクラと暮らしてたら、もしかしたらずっと気がつかない気持ちだったかも知れない。

…って、よりも気付きたくない、気がつかないように目を塞いでたのかもしれない。


きっと、心のどこかで分かってたから。

こんな私を誰も好きになんてなってくれない。それどころか、キモイとかバイキンとか…デブスって遠ざけられる。

見返したいって一時期…過去、何回か
肌の手入れとかちょっとしたお化粧とか
ダイエット…色々頑張ってみたけど
(サクラにしてもらった)

頑張れば頑張るほど

“お前がどう頑張ったってムダ。”
“ゲェ!キモイだけなんですけどぉ”
“何、勘違いしちゃってんの?コイツ”

って、散々バカにされて…それを見た先生でさえ笑っていた。


それでも、中には私と普通に接してくれた人もいた。

けど、ある日の休み時間、聞いてしまった。


“あのおブタ姫、お前の事好きなんじゃね?”

ショウに普通に接してくれた男子を、
クラスメイトが冗談半分でからかっていた。

すると

“え〜?勘違いされたら嫌だなぁ。
さすがに、ショウさんを恋愛対象に見れる人なんていないでしょ。ありえないから。”

“だよね〜!アイツ、何勘違いしてんだか、
最近キモイ化粧したり、ダイエットまでしてるらしいじゃん。

きっと、〇〇君の気をひこうって色気付いちゃってんだよ。”

“ウゲェ!アイツに好かれるとか、どんな
地獄だよ!そう思うだけで、吐き気する!
なぁ?〇〇?”

“つーか、おブタ姫と恋するとかナイナイナイ!キモすぎぃ〜!やめてよぉ〜。
想像しちゃったじゃぁ〜ん!アハハ!”

“それに、あんなん好きになる人なんて
この世にいないからぁ〜!ぷっ!”

“そこまで、言うのはさすがに可哀想だけど。
確かに、ショウさんに好かれたら…
僕も嫌かも。申し訳ないんだけど気持ち悪い。”


それを聞いてしまった当時のショウは、
ショックのあまりそれからしばらく学校を休んだ。

別に普段から自分がこんな事言われてるってのは知ってた。
ここまで、酷くは言われなかったけど。
少し、いじられる感じで。

でも、傷つくのは傷つくし…毎日のように悪口言われたってこんなの慣れる訳はない。
悪口言われた時は、その度に傷つくしそりゃ泣いちゃう。悲しい。


ただ、〇〇君がショウに対し普通に接してくれた事が嬉しくて、お友達になってくれたら嬉しいなって思ってただけで。

その男子の事、恋愛対象として見た事はなかったのに…告白した訳でもないのに
何故かショウが振られた感じになってて…

恋愛に関わるって、こんなに嫌な気持ちになるだけなんだ。

そういえば、恋愛でクラスメイトの一部女子達が揉めて大変な事になってたのを見た事もある。男子と多くの女子達は知らないだろうけど。

もう、色々ぐちゃぐちゃになってたのを
目撃した事も多々あった。

ショウに友達がいないから教室に
一人いるのも辛くなって
人気のない場所に避難してる時そういう場面と出会す事が多かった。

悪口やら揉め事やら、浮気やら。

たいがい、恋愛関係が多くて。
恋愛のせいで、仲間に外れにされたり
親友だった友達と絶交したり…もの凄い女の
バトルも見た事もある。

面倒なもんだなって思った。


加え、あの出来事が加わって。


自分は、人に恋するだけで
その人を不快にさせてしまうんだ。
気持ち悪いだけなんだ。と、思い

自分がリアルで、恋、恋愛、結婚してはいけないと思った。

そりゃ…恋愛に対して凄く憧れはあるけど。

だから、妄想の中での恋や恋愛は許してほしい。

ショウにとって恋愛は叶わない夢物語で
憧れから、演劇やドラマ、映画など恋愛ものが大好き。
夢を見せてもらって素敵な気持ちになれるから。


…あ〜あ、変に気がついちゃったなぁ…

気づきたくなかったなぁ…


だって、サクラに好きだってバレちゃったら
気持ち悪いって嫌われちゃう!

サクラにだけは嫌われたくないから。


お父さんだって言ってた。

サクラは私から解放されたら、自由に恋愛できるって。

きっと、サクラの好きになる人は
サクラに見合う素敵な人なんだろうなぁ。

そして、美男美女のお似合いカップルとか言われてみんなの憧れになるんだ。


想像したら、ズキリと心が痛み
ギュウギュウと胸が苦しく、たくさん涙が溢れてきた。

今、考えると

もしかしたら、サクラは自分といる事で
それだけで周りにバカにされていたのかもしれない。

そう思ったら、リュウキの言う通り
サクラと離れて良かったのかもしれない。


だって…


大好きなサクラには幸せになってほしいから。

サクラの足枷、お荷物にはなりたくない。


それにしても、こんな夢見ちゃうなんて…


サクラ好き過ぎるにもほどがあるよね!私。

けど、夢の中だけでもサクラに会えて嬉しかったなぁ。


…いい夢だったなぁ…


また、サクラに会える夢…見たいなぁ。


だって、夢の中だとどんな事したって許されちゃう。


今度は、サクラと恋人になった夢とか見てみたいなぁ。


ドキドキ…!


あ〜あ、夢を自在に操れないかなぁ?

夢くらい、いい夢みたいな。


そう思う、ショウであった。

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