君がいたから

「注射苦手なのにえらいよ
ごほうびに昨日約束したこと話すから、力も抜こう 」


「…うん 」


昨日はいきなり刺されたから
今日は少しだけ警戒もする。


「結愛、腕見てたら意味ないでしょ
俺の顔見て 話すから」


「わかった………」





蓮の顔を見ると、

なぜか少しだけ悲しそうな顔をしている。


なんで………?

ジーっと見たまま動けなくなっていると
蓮は大きく息を吸いこんだ。


「俺の母親、俺が幼稚園のころガンで亡くなったんだ… 」

えっ……嘘。

初めて知った蓮の悲しい過去に
胸がズキンと痛め、注射の怖さを忘れるほどだった


「でも、俺、母親が苦しんでいても泣くことしかできなくて、小さいながらもすごく辛かった。

母親がいなくなったときもなかなか立ち直れなかったけど、将来母親のように苦しんで人がいたら少しでも助けてあげたいと思った。

だから俺は医者になったんだよ 」



蓮のお母さん…
きっと優しくて強い人だったんだろうな


会ったこともないし、
蓮が幼稚園のころだと私が生まれる前の話
なのにキリキリと胸が痛む。



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