君がいたから

1分ほどすると、
ドアが開けられて蓮が入ってきた。

私の病室は、奥の方にあって、
医者や看護師がいるところから遠いから
急いできてくれたということがわかる。


「結愛、吐き気きちゃった?
よしよし 辛いな 」


「蓮っ………」


助けを求めて少し体を起こした。


けど少しの動きでクラクラして、

目の前が一瞬真っ暗になって倒れこむ。


そして再び吐き気の波が襲ってきた。


「吐きそう………」


口から嘔吐物が出ないように口元を抑えながら、小さい声を出すと、ビニール袋を当てられた。


「我慢しないで、吐いて………
そうの方が楽になるから 」


背中をさすってくれる蓮…


私だって、医者とはいえ大好きな彼氏の前で吐きたくなかった。


だけどこればっかりは我慢できるものではなくて、口を明けた瞬間に胃液だけがドバっと出てくる。


「オェ………ゲホツ ゲホツ………」


もう出てくるものがなくても、収まらない吐き気に、嫌気がさす。


「グスン………もうやだ…点滴終わりにして
ヒック………こんなのやだ………」


無理なお願いだとわかっていても
弱音しか出ない。





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