直球すぎです、成瀬くん



「柚ー、遅刻するよー?」

「はーい…っ」


やばいやばいやばい……っ!!



朝目が覚めて、時計を見た瞬間に飛び起きた。
家を出ないといけない時間の10分前だったからだ。


いつも入念にセットしてあるアラームは全て消されていた。寝ぼけた私が、きっと全部消したのだろう。


何で私二度寝なんてしちゃったの………!?

1年生から寝坊で遅刻なんて絶対できない………!!


急いで着替えて、髪はブラシで数回梳かしただけ。いつもアイロンで寝癖を直すけれどそんな時間はない。



「今日寒いからマフラーしていきなさいね、そこに出しておいたから」

「うんわかった…っ」


慌てて階段を駆け下りる。そのまま洗面所へ向かい、洗顔と歯磨きを済ませたら玄関へ。


「っいってきます…っ」

「いってらっしゃーい」


全力で走ればギリギリ間に合うはず………!






「…あ、やっと来た柚。おはよー」

「あ〜柚〜!今日休みなのかと思って心配してたよ〜、大丈夫?」

「……っ、だ、だい、じょ、ぶ………お、おは、よう……っ」

「やだめっちゃ息切れしてんじゃん、大丈夫?」



何とかギリギリ施錠前に入れた…………っ


休むことなく走り続けたせいで上がり切った息を何とか整えながら教室へ向かったけれど、教室の外に出て話をしていた3人に声をかけられたら、まともに声を出すことができなかった。



「…どうしたの、寝坊?」


心配そうな百叶が、控えめに訊く。


「……ん…うん………寝坊、しちゃった…」

「えー珍しー」

「はーいそこの女子4人教室入ってー。ホームルームするよー」


朝のホームルームの時間を知らせるチャイムとともに、担任が廊下の先から姿を現した。


じゃあ、とその場は解散し、それぞれの席へつく。


まだ少し速い心臓の音を感じながら鞄からペンケースを取り出していると、隣からくすりと小さな笑い声が聞こえた気がして、咄嗟に顔をその方へ向けた。


「…ボサボサ、髪」

「っ、」


唇の右端を僅かに上げたのを見て、私は慌てて自分の髪に触れる。


……っな、わ、笑わなくたって………!


そんな思いで成瀬くんを見ると、今度は軽く鼻で笑われた。


ひ、ひどい………い、いや、そもそも寝坊した私が悪いんだけど……それにしたって………!




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