直球すぎです、成瀬くん



「宮藤さーん」


「…っあ、はい……っ」



放課後、賑やかになる教室の前方から、私を呼ぶ担任の声が飛んできた。

何だろうと思いつつも、ノートを鞄にしまっていたのを中断して、教壇へ向かう。



「悪いんだけど、今ちょっと時間ある?」

「…え、あ、はい、大丈夫です」


そう答えると、先生はほっとしたように口元を緩めた。


「じゃあ、職員室来てもらえる?」

「わかりました」


先生は、私の返事を聞くなり先に教室を出てしまい、私は慌てて百叶の席へ向かう。


「も、百叶、ごめん、先生に職員室呼ばれちゃって……もしかしたら時間かかっちゃうかもしれないから、今日は先に帰ってて大丈夫……ごめんね」

「…あ、うん、わかった。じゃあ、また明日ね」


百叶に手を振り、私は急いで先生を追って職員室へ向かった。





「…これなんだけど」

「……は、はい………、」


中に入って担任の席へ向かうと、山になったプリントが真っ先に目に飛び込んできた。


「明日朝のホームルームで配るプリントなんだけど、先生用事があって朝来れなくて……明日宮藤さん日直だから、代わりに頼もうと思って」


言いながらその山を指差して、ただ配ってくれるだけでいいから、と付け加えた。


「……あ、は、はい……」

「量あるから成瀬くんに……と思ったけど、あの子そもそも朝のホームルームいたりいなかったりするから…」


特に気にしていなかったけれど、遅刻なのかただのサボりなのか、朝に姿がなかったことは、席が隣になってから何度もあったことを言われて思い出した。


「じゃあ、宮藤さん、頼むね」

「…あ、はい……」


差し出されたプリントを抱えると、ばら撒かないように慎重に、教室へ戻った。




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