直球すぎです、成瀬くん
突然、どこかで何かが倒れるような音がして、驚いた私は咄嗟に、目の前の成瀬くんの手を握っていた。
……な、何の音………?
警戒しながら、保健室の中を見回す。
確か音はあの辺りから………
……あっ…
私の目線の先には、さっき成瀬くんが探し物をしていた戸棚。よく見ると、中の備品らしきものがいくつか倒れていた。
……そっか、あれが倒れた音か…………
音の原因がわかって安堵し、目の前の成瀬くんを見上げると、今まで見たことのない表情をしていた。
いつもはもっと無表情で感情は読み取りづらいのに、驚いたような……瞬きもせず硬直している成瀬くんを初めて見た。
……どうしたんだろう…?
不思議に思いながら自分の手元に視線を移すと………
………えっ……
どういうわけか、私は両手で成瀬くんの手をがっしりと掴んでいた。
「…っご、ごめんなさい……!!」
そうかだから成瀬くん固まってたんだ……!
私は慌てて、掴んでいた成瀬くんの手を離した。
しかし、
「っえ、」
次の瞬間、なぜか私は成瀬くんの腕の中にいた。
………え……?
……え、え、なに、これ………どういうこと………?
今のこの状況が全然理解できなくて、私はしばらく息をするのも忘れた。
「………あ……あ、の、成瀬くん…」
やっとの思いで声をかけると、耳の後ろから大きなため息が聞こえた。
……え…ため息………どうして……?
そう思ったのも束の間、成瀬くんは何事もなかったかのように離れると、出していたテープ類を戸棚に片付け始めた。
「…病院、行った方がいいかもしんねーから先生探してくる」
背を向けてそのまま、成瀬くんは保健室を出て行った。
その静かに閉まったドアをぼんやり見つめながら、私はずっとその場から動けずにいた。
………い、いまの………なに……………?