直球すぎです、成瀬くん
「おー」
いつものトーンでそれだけの返事が返ってくると、成瀬くんはまた目線をスマホに戻した。
……あ、あれ……?意外と普通…………?
…もしかして、気まずいと思ってたのって、私だけ…………?
拍子抜けしてしまうような成瀬くんの様子に、私は頭の中にたくさんのハテナを浮かべながら席についた。
「はい、とりあえず実験の流れはこんな感じだ。今日使う塩酸は、手にかかると危ないからなー気をつけろよ」
……まあ、そうか…
成瀬くん、頭もいいし運動もできるし、おまけに背も高いし………かっこいいし、今まできっと何度もああいうの経験したことあるんだろうな………
……あんなの、初めてのはずないもんね………
だから成瀬くんいつもと変わらないんだ……いちいち気にするほどのことじゃないよね…
……うん、私ももう、これ以上気にするのはやめよう、いつも通りに……あれは単なる事故みたいなもので…
「おい、入れすぎだよ溢れんぞ」
「…っえ、あ」
突然掴まれた手と成瀬くんの声で我に返る。
指定の目盛り以上になみなみと注がれた塩酸に気づく。
「ご、ごめんなさい…!」
あんなこと考えながらやってたからだ……
量を戻そうとビーカーを手に取った瞬間、慌てたせいで中身が手にかかった。
「あ……」
「っおまえ何やってんだよ、手さっさと水で流せ」
私からビーカーを取り上げると、成瀬くんはテーブルの上に溢れた塩酸を手際よく拭き取り始めた。
私はすぐ横の水道で手を洗いながら、その様子を見ることしかできなかった。
……あー、私、何やってるんだろ……………