直球すぎです、成瀬くん
「……おせぇ」
上がる呼吸を抑えながら物置に入ると、成瀬くんはいつもの定位置、1番奥のスペースで鞄を枕にして寝転んでいた。
「……こ、これでも、少し走ったんですが…」
「…おまえ足遅いんだな」
「それとこれとは別じゃないですか…!」
反論するも成瀬くんはいたっていつも通り、特に表情を変えることなくむくりと起き上がった。
「…おまえ、古文のノート取ってる?」
「…え?…取ってますけど…」
「見して」
「…え?」
こうして呼び出されるようになって以来、初めて成瀬くんから具体的な要望が出てきたので、思わず聞き返してしまった。
「…見せろ」
「……いつのですか?今日の分?」
「忘れたわ」
絶対に人に何かを頼む言い方じゃないよなあと思いつつも、これがいつもの成瀬くんなので特に驚くこともなく、私は自分の鞄からノートを取り出した。
「どうぞ」
「ん」
私からノートを受け取ると、自身の鞄からノートを取り出して、真っ白なページを開いた。
「…ノート、取ってないんですか?」
「気づいたら授業終わってた」
「…寝てたんですか?」
「うるせーな何でもいいだろ」
乱暴な口ぶりとは裏腹に、やはり綺麗な字を書くなあと、淡々とノートを書き写す成瀬くんを見て思った。
「……」
物置には成瀬くんがシャーペンを動かす音だけがしていて、私はただその様子をじっと見ているだけの時間が流れている。
ふとその横顔を見ると、意外にも真剣な眼差しでノートと向き合っている。
すっと通った鼻筋に、伏し目がちのまつ毛は男の人にしては長い。