直球すぎです、成瀬くん
「わ〜外真っ暗じゃん!」
「ほんとだ、てか周り全然人いなくなってるし」
「ほんとだ!あたしたち偉すぎない!?こんな時間まで残って勉強したなんて!」
図書室の壁にかけられた時計は、既に18時を過ぎていた。
「そろそろ帰る?」
「そうだね〜お腹空いたし」
「今日の夜ごはん何だろー」
「あたしの家はねカレー!今朝家出る前にママが教えてくれた!」
「うわあいいなあ、そんなこと言われたらあたしもカレーの口になってきた…」
勉強に集中したおかげで、少し気分が紛れてよかった。
今日の夜ごはんの話題で盛り上がる2人の会話を、いつもと変わらない気持ちで聞けている気がした。
じゃあまた来週、と手を振って、まりなちゃんと玲可ちゃんと別れ、いつものように百叶と通学路を歩き始めた。
いよいよ12月に入ったので、この時間は一段と寒さが増す。時折吹く風は刺すように冷たくて、その度に私はマフラーに顔を埋めた。
街灯に照らされる道を他愛もない話をしながら歩いていたけれど、会話の隙間で、さっきまでずっと頭の隅に追いやっていたものが少しずつ、けれど確実に頭の中を再び占拠し始めた。
……百叶なら、きっと聞いてくれる……
私は意を決して、先日あったことを百叶に話した。
変わりたいと思えるきっかけをくれたのも、変えてくれたのも成瀬くんのおかげなのに、それを全部否定されたみたいで、ものすごくショックだったこと。
静かに、頷きながら私の話を聞き終えた百叶は、「そっか…」と短くつぶやいた。
「……それは、ショックだよね、柚は本気で成瀬くんにありがとうって思ってたのにね…」
「……うん……」
いつの間にかお互い足を止めていた。
私たちの間にはしばらくの間沈黙が続いて、行き交う車の音だけが絶え間なく続いていた。
「…柚は、どうしたい……?」
しばらくして、百叶がゆっくりと口を開いた。
どうしたい…………
少し考えて、私もゆっくりと答えた。
「……成瀬くんに、そんなことないって……成瀬くんのおかげだって、伝えたい…」
「…うん、じゃあそれ、成瀬くんに、ちゃんと伝えなきゃね。急にそんなこと言い出したってことはさ、何か誤解とかしてるのかもしれないし…」
きっと大丈夫だよ、と付け加えて、百叶は優しく私の手を握ってくれた。
「……うん、そうしてみる…ありがとう百叶…」
私もその手を握り返した。
ちゃんと言葉にするってこと、成瀬くんが教えてくれたんだから………