直球すぎです、成瀬くん
雪が降ってしんとした道を2人で歩いていると、また妙な緊張感に包まれる。
あまりにも静かで、僅かな呼吸の音すら過剰に意識してしまう。
繋いだ右手に走りっぱなしの緊張感。…て、手汗とか…大丈夫かな私………
「…ありがとな」
「…えっ…」
不意に口を開いた成瀬くんは、繋いだ手に力を込めながら続けた。
「おまえに酷いこと言ったのに、傷つけたのに、それでもぶつかってきてくれて」
「…成瀬くんが私を変えてくれたおかげです。今までの私なら、きっと逃げ出してました」
「……ありがとう」
そう言った成瀬くんの顔が街灯にぼんやり照らされて、今までに見たことのないくらい柔らかく笑っていて、私の胸はきゅう、と締め付けられた。
「…宮藤、強くなったな」
「……へへ、おかげさまで…」
「もうあんな顔させねーようにする」
ゆっくりと足を止めてそう言った成瀬くんの真っ直ぐな瞳が、私を捉える。
「…だから、これから、よろしく」
好きな人が自分を好きになってくれるなんてものすごい奇跡を、今、ものすごく強く感じた。
「…こちらこそ、よろしくお願いします…!」
これから先、ずっと成瀬くんと一緒にいたい。色々なところに行って、同じ時間を過ごして、2人の思い出を増やしていきたい。
そんな想いを込めて成瀬くんを見上げると、前髪にくしゃっと触れて、視線を逸らしてしまった。
「…ん」
短く返事をしてすぐに、完全に向こう側を向いてしまった成瀬くん。
……あれ、成瀬くん…………
「……あの、もしかして、照れて…」
「照れてねーよ」
私がまだ言いかけているのに速攻で否定した成瀬くんの様子がおかしくて、私は思わず笑ってしまった。
「もっと成瀬くんに笑ってもらえるように、私も頑張ります」
そう宣言すると、向こうを向いていた成瀬くんがそっと視線をこちらに戻した。
「…期待しとくわ」
「っ、!」
ぐっ、と手を引かれたかと思ったら、一瞬だけ触れた唇。
「……照れてんの?」
「〜〜〜っ」
パッと手で口元を隠す私に、意地悪そうに顔を覗き込んでくる。
「成瀬くんずるい」
「何とでも言えよ」
肩を揺らして笑った成瀬くんにつられて、私も笑った。
笑うたびに生まれた白い息は、澄んだ冬の夜空にゆっくりと漂うように浮かんでいった。