直球すぎです、成瀬くん



「……お〜い柚?聞いてる?」

「…っう、うん…っ、ひ、ひま!」

「じゃー決まりだね」


にっこり笑ったまりなちゃんは、私の前の席の椅子が空いているのを確認するとそれに座った。


「で、どこ行く〜?」

「んー、無難にカラオケとか?」


玲可ちゃんがスマホの画面を見ながらそう言った。


「え、あたしさ、あのおっきいショッピングモール行きたい!」

「…そういえば、駅前に最近新しいカフェできてたの見つけたんだよね。私ずっと気になってて」


まりなちゃん、百叶がそれぞれ行き先候補を挙げると、すぐにまりなちゃんが私を見た。


「柚は!?行きたいとこ!」

「え…」


キラキラした瞳が私を映す。


……私が、行きたいところ…………




………あっ、そういえば、家の近くに小さなジェラート屋さんがあるんだよね、ずっと前からあるんだけど、なかなか行く機会がなくて……



そこまで考えて、私はふと思い留まった。


私の家の近くのお店だったら、みんな帰り道が遠回りになっちゃうよね…

それに、ジェラート屋さんに行ったとしても、食べたらすぐに終わっちゃうし、みんなつまらないって思うかも……


百叶がカフェって候補に挙げてるから被っちゃってるし…

カラオケとかショッピングモールで買い物とか、カフェで好きなもの食べるとか、きっとそういう、王道なものの方が絶対にいいよね、きっとその方がみんな楽しいと思うし……



「……ご、ごめんっ、私、そういうところ、詳しくなくて……だから、みんなの行きたいところに合わせるよ…!」


笑顔を作って、そう答えた。


「え〜そうなの?……じゃあどうする?」

「んー、どうしよっか」

「どこもいいよね、全部行きたいけど…」



……よ、よかった、大丈夫そう……

まりなちゃんの感じからすると、そんなこと言わずに挙げてよ、なんて言われるかと少し身構えていたけれど、挙がっている3つの中から決める感じに落ち着いた。



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