直球すぎです、成瀬くん





「よ〜っし歌うぞ〜!カラオケとか久しぶりなんだけどっ」

「あたしも何だかんだ高校入ってから初かも」

「まりな何歌うの?」

「えぇえ迷う〜」



悩んだ末、まりなちゃんの、何かカラオケ行きたくなってきたかも、の一言で行き先が決定した。



友達とカラオケなんて、初めてだ……!

そもそもカラオケなんて、いつぶりだろう……

私は微かな記憶を辿った。


最後に来たのは……確か、母と一緒だった気がするけど………

歌うのが得意ではない私は、ずっと座って母が歌うのを聞いていた気がする。



曲を入れたまりなちゃんが、マイクを取った。やがてイントロが流れる。


「あーこの曲知ってるー、最近よく聞くよね」

「そーそー!歌ったことないけどイケるかな〜」


ないの!?と笑いながら、玲可ちゃんがデンモクを手に取り曲を探し始めた。




……可愛い子って、歌も上手なんだなぁ……


最近流行りの曲を歌うまりなちゃんをぼんやりと見ていると、


「はいっ、柚の番っ!」

「えっ…?」

「みんなで順番に1曲ずつ入れてるから、柚も入れちゃって」


そう言って玲可ちゃんが私にデンモクを渡した。


………ど、どうしよう……私の歌なんて、とても聞かせられない…………



「……あ、わ、私、歌下手だから……、3人が歌うの聞いてるよ…!」

「えー?」


玲可ちゃんが渋っていると、曲のイントロが始まった。


「玲可の番だよっ、早くマイク持ってっ」


まりなちゃんにマイクを渡された玲可ちゃんが、そのまま歌い始める。



「……柚、歌わないの?」


隣で百叶が私の顔を覗き込んだ。


「…う、うん、私、こういうのは、みんなの聞いてる方がいいかなって…」

「………そっか。じゃあ私入れちゃうね」

「うん」


私は手にしていたデンモクを百叶に渡した。



………そうだよ、私は、こういう場では、みんなが歌うのを楽しみながら聞くのが合ってる。


こういうのが、私には1番合ってるんだ。






< 62 / 132 >

この作品をシェア

pagetop