ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

 じっと見つめてしまう。


 俺の瞳が
 ほのか以外映したくないと
 言っているのがわかる。


 俺を、見に来てくれた?

 この曲だけは
 ほのかに届けたかったから嬉しいよ。


 でも……


 なんでそんな苦しそうな顔を
 してるわけ?


 なんで大粒の涙を
 ぽろぽろ流しているわけ?


 俺……
 まだ歌ってないよ……

 
 ほのかへの想い……
 伝えてないよ……


「綾くん?」


 隣の苺の声にハッとし
 現実に引き戻された。


 お客さんが目を輝かせながら
 俺を見つめてくれている。


 ファンのみんな、ごめん。
 この曲だけは
 大事な人を想って歌わせて。


 心の中でつぶやいて。
 俺は、優しくギターの弦を弾き始めた。



 俺の歌声の後に、苺の歌声が続く。
 そして二人の声が重なる。


 お客さんは、うっとりとした表情で
 俺たちの歌を聞いてくれている。


 ほのかは? 

 そう思い、瞳にほのかだけを映した。



 え?


 会場のお客さんの中で
 ほのかの表情だけが明らかに違う。


 なんで泣き止んでくれないの?


 なんで辛そうな瞳から
 涙が溢れているの?


 今すぐほのかを抱きしめて
 その辛さを拭い去ってあげたいのに。


 アイドルとして
 ステージに立っている俺には、
 そんなことすらできなくて。

 歌い続けることしかできなくて。

 じれったくて。苦しい。



 あっ……


 ほのかが
 俺から視線を外した。


 そして俺に背中を向けると、
 お客さんをかき分けて歩き始めた。

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