ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

 フルフルフルーツとの
 合同ライブも握手会も終了。


 今にも心が崩れそうで。

 自分を保っている線が切れそうで。

 逃げるように
 アミュレットの楽屋に飛び込んだ。


 そして
 畳の上にうつぶせで倒れ込んだ。



 しばらくして入ってきた
 雅もマトイも春輝も。
 俺のことを放っておいてくれて
 マジで助かる。


 どうした?なんて聞かれたら
 涙が決壊して
 子供みたいに泣きじゃくりそうで。

 そんな情けない姿をさらけ出したら
 もう俺は続けていく自信がない。

 アミュレットのリーダーも。
 アイドルも。


 その時、トントンとドアを叩く音が。


 さすがの俺も
 アミュレットメンバー以外に
 こんな姿を見せられない。

 一応、体を起こす。


「明梨だけど。お願い。入れて」


 切羽詰まったような、明梨ちゃんの声。

 雅が急いでドアを開ける。


 明梨ちゃんは
 雅なんて見向きもしないで、
 俺のところに駆けよってきた。


 なに? 俺に用?


「これ。渡されたの」


「え?」


「綾星くんにって。
 その人、すっごく泣いてて。
 受け取っていいかわからなかったけど。
 拒めなくて」


 明梨ちゃんから紙袋を受け取った。


 中を見ると
 見覚えのあるマンガが5冊。


 誰からかなんて、すぐにわかった。

 だってマンガに挟まれたように
 シャーベットブルーの雫のネックレスが
 一緒に入っていたから。


「綾星くんに……
 伝えてって言われたの……」


「なんて?」


「え……と…… その……
 『綾星くんのファン、卒業します』って」


 それって
 もう俺には会ってくれないってこと?

 御曹司のところに、行くってこと?


 やばい俺……
 もう……
 涙がこらえきれない……


 メンバーにも明梨ちゃんにも
 泣いているなんてばれたくなくて。
 手のひらで瞳を必死に隠す。


 でも……隠しきれてねぇ。


 涙がひっきりなしに頬を伝って
 畳に落ちていくから。


「綾星くん……大丈夫……?」


 ものすごく心配してくれていることが
 わかる、明梨ちゃんの声。


 でも、放っておいて。

 マジで俺、こんな情けない姿
 誰にも見られたくないから。


「明梨ちゃん
 売店にメロンパン買いに行こう」


 雅が明梨ちゃんを
 俺から遠ざけようとしてくれている。
 

 プライドの高い俺が
 泣き顔見られたくないってこと、 
 わかってんだろうな。


 雅の気遣いが
 さらに俺の心を弱くする。


「でも……」


「春も行くぞ」


 マトイの声に
 のほほんとした春輝の声が続いた。


「あ、そうだね。
 僕は、モンブランた~べよっと」


「事務所の売店に、そんなのねえっつうの」


「だって、食べたいんだもん」


 俺を置いて
 楽屋を出て行ってくれたみんな。

 感謝してもしきれねえな。マジで。



 誰もいなくなった楽屋。


 俺は心にため込んでいた悲しみを
 涙に溶け込ませるように、
 嗚咽混じりの泣き声と共に吐き出した。

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