よせなべ
「仕方ねーじゃん、このコタツ小さいし」


俺にとってはぴったりサイズなんですけどね。足が長いのを自慢か。


「俺がくつろげねーだろ、ほら、少しどけろって」


げしげしと亮の腿の辺りを蹴ってやると、亮が少し足を折り曲げた。

ようやくか、と思った矢先、その曲げた足が俺の足へ再び突っ込んできた。


「おいこら」


「先に蹴ったのはお前」


「それは悪かったから素直に足を引っ込めろ、よ」


「お前こそ引っ込め、ろ」


げしげしと互いの足を蹴り合うなんていうくだらない争いをしている間に、保温性が抜群に低いアルミ鍋がどんどん冷めていく。

気がついた時には湯気が消えていた鍋を見て、ようやく俺達は我に返った。
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