黙って俺を好きになれ
初めて尽くしで私が盲目になってるんじゃないかと、彼女なりに心配してくれたらしかった。ある意味そうなのかも知れないし。ある意味そうなれずに踏み出す一歩を躊躇ってもいる。

バレンタインもあえて連絡を取るつもりはなかった。渡したいものがあるから来て欲しいなんて、おこがましくて言えそうにない。そもそも今まで自分から電話したことすらないのだ。ハードルが高すぎる。

私と幹さんの関係を、エナとショウヘイ君に置き換えても意味がないのは分かっているけど。喧嘩して文句を言いながらも解り合えてる“フツウ”が羨ましく思えた。・・・・・・それを選ばなかったのは自分なのに。

胸の痛みに気が付かないフリをした。片隅を過ったふにゃふにゃした笑顔を打ち消した。ぶ厚い本を閉じるように。

詰め込んで心のふたを被せ直して。空になったお弁当箱を片付け始める。途中からただ口を動かしていただけでお腹を満たされた気がまるでしなかった。





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