黙って俺を好きになれ
次の日も一縷の望みにすがり、待った。何度かけても幹さんが電話に出てくれることはなかった。

陽射しの下にいても明るい場所にいても、暗かった。色から光がなくなった。全部おなじ色に見えていた。

その次の日も。耳の奥に単調で無慈悲な呼び出し音が残響した。電源が切られていないことが唯一の救い。それを胸に抱いてさらに深い絶望へと堕とされた。“明日”が闇でしかなくなっていた。

朝が来て会社に行こうと思った。気が狂いそうなほどの不安に圧し潰される一日がまた始まる。・・・そう思ったとき。プツンと微かな音を聴いてラグの上に膝から崩れ落ちていた。

ただ悲しくて。悲しくて哀しくて、涙が水のように流れた。声を上げて泣いた。

もう精魂尽き果てていた。ロボットになって誰かに笑うことも、自分を殺して仕事に打ち込むことも。

苦しくて苦しくて、もうどうしていいか分からなかった。幹さんがいなくなったのなら。なにもない。未来も、生きてる意味すらない。

俺を信じてろ。

そう言ったのに。

死ぬまで離さねぇよ。

誓ってくれたのに。


「ッ・・・いや、ぁ・・・、つかさ、・・・さんっ・・・、ひとりに、しないで・・・、おねがい、・・・かえってきて・・・、おねがい・・・ッッ・・・」


帰ってきてくれるなら、何と引き換えにしてもよかった。
神様でも仏様でも悪魔でもかまわなかった、望みを叶えてくれさえすれば。
できないならこのまま涙と一緒に自分も溶けてなくなりたかった。

欠片も残さずに、この世界から。
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