黙って俺を好きになれ
体調が悪いと、初めて嘘で会社を休んだ。課長は疑いもしないで『ゆっくり休んだほうがいい』と気遣いをくれた。暗い心に重みが増した。エナにはラインで伝えた。始業間近で既読にはならなかった。

魂を置き忘れた抜け殻のようにベッドの上に横たわる。

幹さんに何かが起きたことしか分からない。
知る方法が分からない。
誰も教えてくれない。

ここが行き止まりの終着点・・・?
これからだったのに・・・?
小さな楽園で二人でいられるはずだったのに・・・?

チガウ。
ソンナコトナイ。
ダメ、シンジテ。
マダ、アキラメナイデ。

頭の中で虚ろに木霊する。

・・・私だって信じたくない、信じたくないの、何もかも終わりだなんて。幹さんが黙って消えてしまうなんて・・・っ。

泣き腫らした目からまた、絶望と悲しみが溢れ出した。いっそ干からびるまで出し尽くしてしまいたかった。泣いて泣いて、泣き疲れて。・・・いつの間にか意識が落ちていた。



落ちる前に幹さんが言った。『・・・できるな?』

はい、と答えた自分を思い出した。

『いい子だ』

夢うつつにあなたは。この上ない安らかな眼差しで微笑んでいた・・・・・・。



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