黙って俺を好きになれ
微睡みから醒めるのを待ち、帰ることを告げると、どことなく聞き分けがない幹さん。

『・・・構いませんがね。嬢ちゃんがどこの誰に目ェ付けられようが』

山脇さんの一刺しに冷気を放ちながらも不承不承、代わりに来週の土曜日にマンションに引っ越せと私に迫る。

予定は4週目の土曜だったから荷造りはそんなに進んでない。とにかく段ボールに詰め込んでいけば無理じゃないと思う。運送の手配は幹さんが引き受けてくれて、早められるならもちろん異論はない。・・・んだけど。

「でも・・・、幹さんはまだ帰ってこられないんですよね・・・?」

住み慣れた街を離れ、今より倍以上は広いあの部屋に一人きりは正直に心細い。

「・・・二、三日で動けるようになる。イトコの手料理で養生する方が治りも早いだろうが」

「え?」

「なんだ、・・・不満か?」

思いきり首を横に振った。それじゃ。

「しばらくは邪魔要らずでお前といられるな」

あなたはあなたらしく。ベッドから私を見上げて不敵に口角を上げた。
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