黙って俺を好きになれ
「ところで糸子ぉ、いつツッコもーかと思ってたんだけど、それって婚約指輪でしょー?」

教会式を終えてから、ビュッフェ形式で畏まらないスタイルの披露宴でのこと。友人4人で円卓を囲み、左隣りの七美がニンマリしながら私に向かって言った。

「じゃあ次は糸子じゃん」

向かいの彩花が意外そうに目を丸くして。

「えぇと、・・・そうなるかな」

どう説明しようかと右側の梨花に視線で助けを求めれば、あとは彼女が引き受けてくれる。

「志保はボク達の中で結婚一番乗りって思ってるだろうし、水差すつもりなくて言ってなかったんだけど。トーコお腹に赤ちゃんいて、もう人妻なんだよ。婚約指輪じゃなくて結婚指輪、それ」

『エェ~~~ッ?!』

驚いた二人のユニゾン。七美はポカンと口を開けっぱなし。彩花の目は丸から点に。

「式は後回しで、つわりもやっと収まってきたところ。名字も羽坂じゃなくて今は小暮だからね」
< 268 / 278 >

この作品をシェア

pagetop