黙って俺を好きになれ
3-1
エナは、筒井君本人からクリスマスの経緯(いきさつ)を聞いたようだった。

冷やかされるかと構える私に、『あー見えてもちゃんと本気なのは保障する。だから糸子も、ダメならダメできっちりフッてやって』と真面目に背中を押された。

社内で顔を合わせても意識しないようにするつもりだったけど、25日を過ぎれば28日の仕事納めまであっという間。彼とほとんど話す機会もないまま29日から1月7日までの年末休業に突入したのだった。





私は、普段は手を付けないところの大掃除を二日間に分けて済ませると、大晦日に実家に帰った。三元日まで両親と過ごすのも毎年の決まりごと。

それを建前にしたっていう後ろめたさを感じつつ、筒井君からの初詣の誘いは丁重にお断りした。

『じゃあオレはー、センパイを想いながら独り寂しく寝正月っすねー』

彼の実家は雪深い地方で、帰省はゴールデンウィークとお盆限定だと、スマホの向こうでおどけるように笑った。

『浮気なんかしませんからー、安心して里帰りしてきて下さいよー』


・・・・・・なんの心配もしてません。あしからず。
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