黙って俺を好きになれ
先輩を好きになる勇気がどうしても出てこないなら。気持ちにフタをしてもう会わない、それも正解。

筒井君の存在が小さくないなら。そっちの道を選んで先輩をまた思い出だけにする。・・・間違いじゃない。

ただ正直に自分を誤魔化さないでいたいのは。きっと正解。

あの人に向かって伸びていく気持ちの行く先を最後まで確かめたいのは。間違いじゃない。

細波に揺らされる心の水面。同じ方に波立つ。導かれるように。

やり直しがきかない気がして。必死に正解だけを見つけようとしてたのかも知れない。

「・・・怖がってても何も答えが出せないよね」

「うん」

「そんな中途半端じゃ筒井君にも顔向けできないし、後悔しか残らないよね」

「そうだね」

「ありがとう梨花。・・・行けるところまで、行きたい方に行ってみようかな」

「行っておいで。迷子になってもボクがちゃんと探してあげる、地の果てでも」

私の缶に自分の缶を合わせて鳴らし、涼やかに微笑んだ梨花だった。
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