こじらせ社長のお気に入り
「おはようございます」

「あっ、笹川さん。金曜日の帰りは、大丈夫だった?」

挨拶すら省いて飛んできた言葉に、思わずドキリとする。

「そうそう。一応、心配してたのよ」

近くにいた数人の社員が、心配というより、若干興味津々といった様子で同調している。いやいや、そこは心配しておいて欲しい……

「き、金曜日は、あのまま真っ直ぐタクシーで送ってもらいましたよ」

「ええ?何もなかったの?」

「嘘。あの遊び人の社長が!?」

〝遊び人〟の一言に、胸がズキリと痛む。

そうだよね……
あれだけ軽そうな人だもの。相当遊んでいると言われても、納得してしまうわ。

そんなの、前からわかっていたことじゃない。今更胸を痛めるなんて……
おまけに、そんな遊び人の社長なのに、手を出されなかった自分って……って、出されても困るんだけど。

「笹川さん?」

「あっ、いえ。本当に送ってもらっただけなので」

「なあんだ」


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