こじらせ社長のお気に入り
「何が、なんだなんですか?」

突然割り込んで声に、そこにいた全員がドキリとする。既に出社していた副社長だった。

「社長のことですよ。笹川さん、金曜日は何事もなく送ってもらえたそうです」

「あたりまえですよ。いくらあの人でも、大切な社員にそう簡単に何かするわけないですよ」

〝大切な社員……〟

頭ではそりゃそうだと思っているのに、なんでだろう……それじゃあ、社外の人だったら……?なんて考えてしまう。

あれだけ好意のあるような言動をされれば、勘違いしそうになる。
けれど、そうじゃないんだ。
女の子に甘い言葉をかけるのは、あの人にとって呼吸をすることと同じ。私に向ける言動も、何も特別なものじゃないんだ……

「笹川さん?」

副社長に顔を覗き込まれてドキリとする。

「どうかしましたか?」

「い、いえ。なんでもないです」

そそくさと寝げるように社長室に向かう。背後では、既に違う話題に変わっているようだ。

「ああ。あそこの担当者さん、無理を言うことが多くて……」

「今その納期って…SEに殺されそう」

私も、仕事に集中しないと……



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