こじらせ社長のお気に入り
付き合いのきっかけは、向こうからの告白だった。元々知り合いで、気の合う人だったから俺はOKした。ただし、自分は数年後には退職して起業するつもりであることを承知してくれるのならと約束して。彼女は「もちろん」なんて、笑顔で応援してくれた。

でもそれは、見せかけにすぎなかった。
後から聞けば、俺と付き合えるのなら、とりあえず頷いただけだったそうだ。

1年間。
付き合って1年もの間、ずっと俺を応援してくれていたんだ。

それなのに、いざ話が動き出すと、掌を返したように反対し出した。
準備を進める俺の横で、毎日のように恨み言を聞かされたよ。

それならと別れを切り出せば、〝結婚適齢期の自分にとって、一年を無駄にしたのは大きい〟〝責任を取って、このまま会社を辞めずに結婚しろ〟とまで言い出した。
最後には、相手の親まで交えてどろどろの話し合いが続いた。
幸いにも父親の方は常識的な人で、娘が悪いと叱り付けて解決させてくれた。



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