こじらせ社長のお気に入り
「えっ、いや……任せられた仕事は頑張りますけど……社長はそんなにひどいんですか?」
我ながら、なかなか失礼な発言だと思う。けれど、さっきからの副社長の様子といい、実際に対面した社長のゆるさというか、軽さというか、そんなのを見たから思わず言ってしまった。
市井さんの笑いが増して、副社長はわずかに顔をしかめていた。
しまった……初日から失言だ。やってしまったかも……
「ひどいなんて、可愛らしいレベルじゃないですね。きちんとしつけされた犬の方が、よっぽどちゃんとしていますよ」
そ、そっちでしたか……
私以上の辛辣な言葉に、一気に肩の力が抜けた。
「ああ。カイ君ですか」
「カイ君?」
どうやら、〝きちんとしつけされた犬〟は実在する子らしい。
そして、〝カイ君〟と名前を出された途端、冷淡そうな副社長の目が、嬉しそうにわずかに細められたのを逃さなかった。
「この子ですよ」
そう言って見せられたのは、副社長のデスクに飾られていた写真立てだった。角度的に見えなくて、立ち上がった時にでも盗み見しようと目論んでいたものだ。
我ながら、なかなか失礼な発言だと思う。けれど、さっきからの副社長の様子といい、実際に対面した社長のゆるさというか、軽さというか、そんなのを見たから思わず言ってしまった。
市井さんの笑いが増して、副社長はわずかに顔をしかめていた。
しまった……初日から失言だ。やってしまったかも……
「ひどいなんて、可愛らしいレベルじゃないですね。きちんとしつけされた犬の方が、よっぽどちゃんとしていますよ」
そ、そっちでしたか……
私以上の辛辣な言葉に、一気に肩の力が抜けた。
「ああ。カイ君ですか」
「カイ君?」
どうやら、〝きちんとしつけされた犬〟は実在する子らしい。
そして、〝カイ君〟と名前を出された途端、冷淡そうな副社長の目が、嬉しそうにわずかに細められたのを逃さなかった。
「この子ですよ」
そう言って見せられたのは、副社長のデスクに飾られていた写真立てだった。角度的に見えなくて、立ち上がった時にでも盗み見しようと目論んでいたものだ。