こじらせ社長のお気に入り
「さあ、脱線してしまいましたが、仕事に……」

「おい。お前のとこのカイが賢いことは知ってるけど、所詮犬だ。何が俺よりきちんとした子だ」

げっ、社長だ……
今のやりとりは、しっか。聞こえてしまっていたのだろう。

いくら軽そうな人とはいえ、犬と比較したなんて……
いや、ちょっと待てよ。比較したのは副社長であって、私ではない。
まあ、笑ってしまったけれど……

「事実ですので」

うわあ。真顔で言い切ったよ。
ここまで言われる社長って、いったい……

「ふん。犬にデレデレになってるやつに言われたくないわ。
そんなんより、市井ちゃん。口紅の色変えたよね?よく似合ってるよ」

ガラリと甘い口調になる社長。
ちらっと市井さんに目を向けると、ほのかに頬が赤くなってるじゃないの。これはそういう関係なのか?

ん?ちょっと待てよ。さっきは私に対して随分思わせぶりな態度だったよね?


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