こじらせ社長のお気に入り
午前中いっぱい、事務的な仕事をしていて気付いたことがある。それは、社長が無駄に社長室から出てきては、何かにつけて女性社員に甘い言葉をかけているということ。そして、その都度副社長が絶対零度の視線を投げつけているということ。

この2人、決して不仲には見えない。いや、むしろ言葉は冷たいけれど、副社長は社長のことを、なんだか心配しているように見えてならない。それなのに、発する言葉と向ける視線は、なかなか厳しいものだ。これはいわゆる、ツンデレってやつなのだろうか?

そこで、社長室で交わしたやりとりなんかも思い起こしてみると、ある一つの結論に辿り着いた。

そうか!!
副社長が私に寄せる期待は、このどことなくふらふらしたような危うさのある社長を叱咤激励して、道を踏み外さないように支えて欲しいということなのではないか?

社長は、決して仕事のできない人じゃないはず。いや、むしろ起業するぐらいだから、できる人なのは明確だ。だけど、どこか足元をすくわれてしまうようなこの危うさは、誰かがケアしなくてはいけない。
きっとこれまでは、そこを副社長が支えてきたのだろう。しかし、それも多忙な中では目が行き届かなくなってきたのかもしれない。

そうに違いないと勝手に思い込み、一人納得していた。


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