新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「えっ? 涼ちゃん、急にどうしたの?」

「えっと、友達に電話するって約束していたことを思い出しまして。今日はもう寝ます」

 次に聞こえてきたのは川端の声。急いで靴を脱ぎ、廊下を突き進んでいくと、リビングから勢いよく川端が飛び出してきた。

 しかしその先にいる俺を見て足を止めた。

「ジョージさん……」

 ポツリと俺の名前を呟くと、ギュッと唇を噛みしめた。その姿は泣きそうになるのを必死にこらえているように見える。

 こんな顔をさせているのは、俺のせい? 昨夜のことが夢か現実かの前に、もしかして俺は酔って記憶がないだけで、川端にひどいことをしてしまったのだろうか。

 そんな不安に襲われ、あれほど告白するんだと意気込んできたのに勢いを失くす。

「川端、俺……」

 それでもどうにか彼女を引きとめたくて口を開いた瞬間、川端は俯いた。

「すみません」

 俺を見ることなく一言そう言うと、横を通り過ぎていく。
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