新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 そうだ、俺はまだ川端になにひとつ伝えられていない。彼女が俺のことをどう思っていようと、俺が彼女を好きなことに変わりない。

 それに昨夜、本当にひどいことをしてしまったのなら謝りたい。

「そうだ、涼ちゃんの引っ越し先だけどさ。ジョージが住むマンションの近くで探そうか。そうすればなにかと会う理由ができるだろ?」

 会う理由、か。たしかにシェアハウスがなくなったら、会社以外で会えなくなるよな。だったら……。

「いや、探さなくていい」

「えっ?」

 俺の反応を見てからかうつもりだったのか、陸は俺の話を聞いて目をパチクリさせた。

「川端は俺のマンションに住まわせるから」

「えっ……えぇっ!?」

 驚いて叫ぶ陸と彩香に、クスリと笑みが零れる。

 なにかと物騒な世の中だ。ひとりにさせられない。いや、させたくないし、俺が一緒にいたいだけなのかもしれない。

「ありがとうな、ふたりとも」

 素直な思いを伝えたものの、気心が知れている相手だからこそ恥ずかしいものがある。
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