新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「俺たちの前では気丈に振る舞っているが、あいつにしかわからないつらさや苦しさを抱えていると思う。それでもジョージは、アラカワ製菓を継ぐと決めた。だからといって結婚まで会社のためにしてほしくないんだ」

 ふたりのジョージさんに対する気持ちがヒシヒシと感じる。
 きっと私には想像できないほど大きくて多くのものを、ジョージさんは背負っているのだろう。
 だって誰もが知っているアラカワ製菓の御曹司だ。人知れぬ苦労があるはず。

 ジョージさんのことをもっと知りたい。おこがましいが、少しでも彼の力になりたい。そんな気持ちが次から次へと溢れ出す。

 ただ好きでいるだけでいいと決めたばかりなのに、金子さんとの関係を知ったら、それだけじゃ物足りなくなっている。
 私、この恋を諦めたくない。

「大家さん、金子さん! 私、ジョージさんに振り向いてもらえるように頑張ります!」

 決意表明のように力強い声で言うと、ふたりは拍手した。

「うんうん、その意気だよ」

「涼ちゃんになら、安心してジョージのことを任せられる」

 まるでジョージさんの父親のようなことを言う大家さんに、私と金子さんは笑ってしまった。
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