新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 立ち上がって大きな目標を掲げた井手君だけれど、彼ならその目標を達成する日も近そう。

 ジョージさんの言う話術も備わっていると思うし、なにより感情豊かで、憎めない人柄だ。
 昨日の入社式でも、同期に気さくに声をかけていたし、誰とでも仲良くなれるんだろうな。

 そんな井手君なら取引先とも、すぐに親密な関係を築けて契約をバンバンとってきそう。

「その日が早くくることを楽しみにしているよ」

 びっくりして声のしたほうを見ると、ドアに寄りかかっていたのはジョージさんだった。

「あっ、新川部長! いや、あくまで目標といいますか。その……」

 さっきまでの威勢はどこへやら。井手君ってば腰を下ろして縮こまるものだから、笑いをこらえるのに必死になる。どうやらそれはジョージさんも同じようだ。口元を手で覆っている。

「いや、上司としては嬉しい限りだよ。その目標が達成できるよう、しっかり指導していかないとな。期待しているぞ、井手」

「新川部長……っ!」

 今にもジョージさんに抱き着く勢いの井手君に、彼はこらえ切れず噴き出した。

「アハハッ! お前、面白い奴だな」

 あぁ、もう。ジョージさんの笑顔の破壊力はハンパない。胸をキュンキュンさせていると、井手君も心臓を鷲掴みされたようで、胸元を押さえていた。
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