新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「ふたりには期待している。頑張ってくれ」

「……はい!」

「精いっぱい頑張らせていただきます!!」

 ふたりでそう答えれば、ジョージさんは私と井手君の肩をそれぞれポンと叩いた。

 上司に『期待している』と言われて、やる気を出さない人などいない。ましてやその相手が上司であり、好きな人でもあるのだから。

「失礼します」と言い、井手君と自分の席に戻ろうと踵を返すと、背後から聞こえてきたのは金子さんの声。

「部長、ちょっといいですか? バイヤー向けのコンペの原稿の確認をしてもらいたいんです」

「どれ?」

 歩を進めながらチラッと振り返り見れば、金子さんが手にしている原稿をふたりで見ている。それがまた絵になっていた。

「ねぇ、見て。ふたりが話してる」

「本当だ。やっぱりお似合いだよね」

 席に戻る途中に聞こえてきた先輩たちのやり取り。この三ヵ月間、同じ話を何度耳にしただろうか。

 表向きはジョージさんと金子さんは婚約関係にあり、結婚秒読みとも噂されている。
 だけど本当は違う。金子さんには大家さんという愛する彼氏がいて、お互いをとても大切に想い合っている。
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