新婚未満のかりそめ初夜～クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする～

「さぁ、なんでも好きなものを頼んでくれ！」

「それはありがたいけど……でも、どうして？」

　井手君が私にごちそうしてくれる理由はないよね？

　メニュー表を渡されても、素直に喜んで選べない。

「それはもちろん、俺は川端さんを全力で応援しているからだよ！　諦めず頑張ってほしいんだ」

　応援って、いったいなにに対して？　仕事？

　小首を傾げると、井手君は妙に演技がかった話し方で言う。

「どんなにお似合いでも婚約していたとしても、まだ結婚はしていないんだ。諦めるのは早い！　新川部長にアタックあるのみだ！」

　話を聞いた途端にギョッとなる。

「ちょ、ちょっと待って井手君」

「悪いな、川端さん。俺、こういうことに関しては敏感ですぐ気づいちゃうんだ。……川端さんが新川部長に恋しているってことに」

　声を潜めて付け足し言われた一言に、大きく目を見開いた。

「えっ？　えっ……!?」

　ど、どうして気づいたの？　そんなに私ってば会社でジョージさんのことが好きだって態度に出ていた？

　動揺する私に向かって井手君は「俺以外が気づいていないと思う」と言いながら続ける。