新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「昔から人を観察するのが好きで、そうこうしているうちに、その人が誰を好いていて嫌っているのかがわかるようになったんだ。それでなにかと一緒にいる機会が多い川端さんの様子を窺っていたら、ふとした瞬間に新川部長を見ていてさ。その目がまた恋に恋している目で、ピンときたわけだ」

 自信満々に言われると、非常に恥ずかしいものがある。

「新川部長には金子さんという、誰がどう見てもお似合いの婚約者がいるというのに、健気に恋心を抱く川端さんが不憫……いや、応援したいと思って」

 ん? 井手君、誤魔化したけどはっきりと『不憫』だって言ったよね?

 井手君がこうして私をランチに誘い、奢ってくれると言い出したのは、報われない恋をする私を不憫に思っての行動?

 いや、絶対そうだよね。だっておかしいでしょ、急に奢ってくれるなんて。

 疑いの目を向けると、井手君はわざとらしく咳払いをした。

「と、とにかくだ! 可能性はゼロじゃない。奇跡が起こるかもしれない。だから頑張ってくれ!!」

 奇跡って……。

 あぁ、でもそうだよね。ジョージさんと金子さんの関係を知っているのは、私と大家さんだけ。

 みんなふたりが近い将来、結婚すると信じて疑わない。そんな人を好きになること自体無謀なこと。奇跡でも起こらないと、成就しない恋だ。
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