クールな王子は強引に溺愛する
辺りを警戒して歩いていくその人の顔が見え、「あっ!」と叫んでしまいそうになり、グッと奥歯を噛み締めた。背中をツーッと冷や汗が流れる。
その人はキッシンジャー卿だった。
喉がカラカラに渇いて、緊張感が走る。見つかったら、きっとただでは済まされない。そんな雰囲気を感じた。
「はぁーっ。行った、わよね?」
植木からゆっくりと顔を出し、小声でモリーと確認し合う。
「はい。かなり前にお城の中に入っていくのが見えました」
用心して念には念を入れ、通り過ぎてからかなり時間が経っている。未だに庭にいるエミリーたちには、もう気付かないだろう。
「怖かったわ。安易に好奇心は抱かないものね」
「はい。私はどのようにリアム様に助けを求めに行こうかと、そればかりを考えておりました」
今回ばかりは自分の軽率な行動のせいで、リアムに心配をかけるところだった。
「この件はリアム様に報告しなければいけないわね」
なにか良からぬ企てがありそうなキッシンジャー卿に胸騒ぎがする。