クールな王子は強引に溺愛する
このまま近くにいては、体調が優れないエミリーに手を出してしまいそうだった。色欲に溺れた眼差しをエミリーに気づかせず、妻の体を労る夫でいたかった。
数日ぶりに重ねた唇は胸を焦がすには十分過ぎて、よろめいて壁にもたれかかる。
拒絶はしていなかった。そうか。優しく触れれば、受け入れる気持ちはあるのだ。
怯えられたあの日以来、エミリーとの距離を測り兼ねていたリアムは、単純な理由に行き着く。喜ばしい発見に、緩みそうになる顔を戒めるため頬を叩いた。
「どうか、されましたか?」
背後からグレイソンに声をかけられ、背筋を伸ばし取り繕う。
「いや、虫がいただけだ」
言った端から顔が締まりを無くしそうで、数度咳払いをするのだった。